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国情報告 経済大国中国の課題 作者:胡鞍鋼 著 , 王京濱 訳 浏览次数:2883

今世紀以降,中国の急進的近代化は中国国内にどのような正負の影響をもたらし,経済大国化しつつある中国の台頭は世界にどのようなインパクトを与えるのか.環境・都市化・社会問題・官僚腐敗など,客観データに基づく現状の正確な情報と,2020年までの発展戦略のシナリオを簡潔明快に提示する.

■著者からのメッセージ

2007年11月 胡 鞍 鋼
 中国の台頭は,すでに不可逆的な歴史的趨勢となってきている.その影響は,中国社会にとどまらず,全世界に及んでいる.本書は,中国はいかに台頭してきたか,どのように台頭してきたか,その影響はいかなるものなのか,といった問いに答えようとするものである.
……(中略)……
 21世紀という歴史の新しいスタートラインに立ち,中国の台頭について考えるにあたって,私は中国台頭の理論的背景に国家発展のライフサイクル理論が適用できると考えた.近代の世界史を振り返ってみれば,西側諸国の台頭と異なり,中国の台頭は,いったん衰退したあとでの台頭,つまり再台頭と言えよう.
……(中略)……
  1980年から2020年にかけて,中国は経済の近代的な離陸と台頭の時期を迎えた.今後15年間(2005―2020年)は,中国にとって世界の大国から世界の強国へ脱皮するための重要な戦略的チャンス期にあたる.2020年以降の中国は,国家発展ライフサイクルの最盛期を迎えるに違いない.  ……(中略)……
 中国の台頭は,日本にとって何を意味するだろうか.この問いに答えるには,日中両国の総合実力をいかに認識すべきかに深く関わっていて,「己を知り,相手を知る」必要がある.
……(中略)……
 中国は総人口において日本の10倍,国土面積においては25倍にものぼるため,経済規模や国際貿易総額で日本を越すのは極めて自然なことである.しかし,人口一人当たりの水準で比較した場合は,中国は日本に比べてまだ大きく遅れている.こうした事実に対して,中国はまず正しく認識しなければならない.一方で,日本も中国の台頭を発展のチャンスとして見なし,中国を正しく認識しなればならない.
 経済のグローバル化と地域の一体化の視角で,日中関係をどのように捉えるのか,また中国台頭という不可避の現実を目の当たりにして,理性的で知性的な日中関係が築けるのか.中国は東アジアで最大の投資受入れ国であるとともに,日本の最大の貿易相手国でもある.日本は中国にとって三番目に大きい貿易相手国であると同時に,最大の輸入国である.また,外貨準備で,中国と日本は世界一位と二位を占めている.
 日中経済の一体化は,想像をはるかに超えて進展している.日本と中国は,アジア地域でお互いに最大の利害関係者になっている.両国とも貿易や交流から利益を獲得できる.まさに,中国の名著『紅楼夢』の名言にある通り,「一方が損ずればもう一方も損をし,一方が栄えればもう一方も栄える」である.日中間に競争メカニズムが存在しているならば,それは競争的な協力メカニズムに他ならず,協力しながら良性的な競争関係を築け,それぞれの発展機会が拡大される.私は日中両国が「和を貴し」とするもとで平和関係を構築しなければならないと考えている.日中両国は不和になれば,お互いに損するのみならず,東アジアないしアジア全体の平和と協力も実現できない.したがって,良好な日中関係の構築は,地縁的にアジア全体の繁栄にも,アジア経済の一体化や貿易自由化の推進にも大きな外部経済性をもたらす.
……(後略)……


日本語版序文
総 論 中国台頭の意味
  一 「ドリーム」から「台頭」へ
  二 国家ライフ・サイクルと大国の台頭
  三 中国台頭の意義
第一章 緑色発展と緑色台頭
  一 黒色発展から緑色発展への転換
  二 緑色発展――中国台頭の避けて通れない道
第二章 発展の動力としての都市化
  一 経済成長を牽引する都市化
  二 都市化の地域的不均衡と経済成長
  三 中国経済の行方と都市化
  四 「三農問題」の解決と都市化
    中国の一九四九年以来の都市化過程
第三章  人間開発とソーシャル・ガバナンス
  一 人間開発の進展
  二 人間開発の不均衡
  三 中国社会の基本状況
  四 現在の中国社会をどのように認識するか
  五 「調和のとれた社会」の構築とソーシャル・ガバナンス
  六 調和のとれた社会を構築するために
  七 中国社会の安定のために
第四章 共産党の施政能力とクリーン政治体制
  一 共産党の施政能力を高めなければならない背景
  二 中国共産党の施政経験
  三 施政能力を向上させるには基本制度の構築が必要
  四 いかに共産党の施政能力を引き上げるか
  五 中国共産党中央規律検査委員会による党の監督強化と国民の直接監督
  六 中国の反腐敗の現状と評価
  七 新しい清廉政治観と国家クリーン政治体制
  八 腐敗防止研究の現状と展望
第五章  中国の台頭が世界に及ぼすインパクト
  一 中国の台頭とグローバル化
  二 世界経済や世界貿易の成長に対する貢献
  三 中国台頭が世界に及ぼすインパクト
  四 持続的発展を目指して
第六章 中国近代化の道――回顧と展望
  一 「大躍進論」から「ステップアップ論」まで
  二 「二段階論」(「両歩走」)――中国近代化の起点(1949―1977年)
  三 「三段階論」――中国式の近代化の道(1978―2001年)
  四 「新しい三段階論」――中国の全面的近代化戦略(2002―2050年)
    全面的な小康社会の目標(2020年)
    社会主義的な調和のとれた社会の内実
  五 全面的な近代化の時代へ
参考文献
訳者あとがき


胡 鞍 鋼(Hu Angang,コ・アンコウ)
中国科学院-清華大学国情研究センター主任,清華大学公共管理学院教授.91-92年エール大学経済学部研究員.中国政治経済論.
『中国国家能力報告』(共著,1993年),『中国経済波動報告』(1994年),『中国発展前景』(1999年),『中国戦略構想』(編,2002年),『影響決策的国情報告』(編,2002年),邦訳書に『かくて中国はアメリカを追い抜く―胡錦濤-温家宝体制の戦略』(2003年,PHP研究所)がある.
王 京 濱(Wang Jingbin=オウ・ケイヒン)
中国山東大学日本語学科卒.東京大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士).同大社研研究員の後,大阪産業大学経済学部准教授.中国経済論.
『中国国有企業の金融構造』(2005年,御茶の水書房).


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